2014年4月8日火曜日

破産と破産手続について

今日は破産と破産手続について書こうと思います。

借金が多すぎて返済できない、支払い請求と金策に明け暮れて日々の業務が進まない、心機一転再起を図りたい・・・・・。長引く経済の低迷により、お金の問題でお悩みの個人の方、会社関係者の方が増えています。

一言で「お金の問題」といっても、個々人に応じてその内容は原因は異なります。そして、その内容や原因に合わせて、それを解決する最適な手続きが異なります。
代表的な手続として、破産申立て再生申立て私的整理(ADR)の3つがありますが、それぞれに以下のような特徴があります。

例えば、ローン返済中のマイホーム、業務上不可欠な工場・工作機械など、残したい財産がある場合には、原則全てを処分する「破産申立て」ではなく、それらを残して整理する「再生申立て」「私的整理」が適切である場合があります。

また、すでに債権者の大半が債務カットに応じてくれている場合、債権者がメインバンクのみであるなど債権者が少ない場合には、裁判所が審査する分時間がかかる「破産申立て」よりも、スピーディーに解決できる「私的整理」の方が適切な場合があります。

そして、債務者にほとんど財産が残っていない場合、債務が多額で返済が困難な場合には、「破産申立て」によって全て処分した方が、早期の再出発のために有効な場合があります。

以下では、最も代表的な手続である「破産手続」について説明致します。

破産手続においては、① 破産申立て、② 裁判所による破産管財人の選任、③ 破産管財人による財産管理(財産の換価・処分)、④ 裁判所による債務の免責決定、という流れで進むのが通常です。

また、債務者の財産が一定基準を満たさない場合(財産が極めて少ない場合)には、破産申立てをして、管財人による財産管理を経ずに、手続が終了する場合もあります(「同時廃止」といいます)。この場合は破産申立てのみで手続が終了するので、短期間で免責を受けることができます

破産申立ては膨大かつ綿密な財産調査、債務超過に至った理由、手続に必要な書類の作成など、高度な法律知識が必要です。
また、破産申立て時に必要な情報が整理されていれば、その後の破産管財人の事務処理もスムーズにいきますし、免責決定まで迅速に進めることができます
そして、破産申立時に同時廃止の要件を満たしている場合には、申立してすぐに免責決定を得ることができるので、迅速な問題解決を図ることができます

また、再生であれば、債務者は債権者を説得できるだけの再生計画を作成しなければなりませんし、私的整理では、個別の債権者を説得して債務カットに応じてもらわなければなりません。

このような手続や交渉は、高度な法的知識が必要となりますし、当事者同士では意見が対立して交渉がうまく進まないことが多いです。そのような場合は、法律のプロであり、第三者的立場である弁護士を間に入れて交渉することで、スムーズに問題が解決することもございます。

現在の生活を変えるため、そして、新たな人生の再出発のために、「お金の問題」でお困りの方は、破産や再生、私的整理を検討してみてはいかがでしょうか。


以下では、参考までに各手続の概要を記載しておきます。

「破産」とは、債務者が債務超過等の場合に、既存の財産を全債権者に対して原則平等に分配するとともに、債務者の債務(借金や支払い義務など)を免責するものです。基本的に裁判所が中心になって手続が進むので、公平性・公正さが重視されます。その分、提出書面の数も多く期限も厳格に定められています。当然時間もかかります。

「再生」とは、債務者が、自己の将来の収入によって、一定の額の債務を分割して返済する計画(これを「再生計画」と言います。)を作成します。裁判所は、作成された計画を債権者の決議に付します。債権者により再生計画が可決された場合、裁判所はその再生計画を認めるか否かの判断をします。再生計画が裁判所に認められた場合には、債務者は、その計画に従った返済をすることで、残りの債務が免除されます。

「私的整理」とは、裁判所を介さずに、債権者と個別に交渉して債務カットの合意を得ることです。裁判所を介さない分時間がかかりませんが、債権者全員の合意が必要になりますので、友好的な債権者が多い、債権者がメインバンクだけといった場合に利用できます。


2014年3月23日日曜日

裁判をする意味について

今日は裁判をする意味について書こうと思います。

依頼者にとって、弁護士に依頼する目的は、貸したお金を返してほしい、慰謝料を支払ってほしい、賃料を支払ってほしいなど様々です。

そのために、弁護士に依頼して、事案によっては裁判にとって問題を解決します。
弁護士は、裁判をするにあたり、証拠を集め、裁判官を説得し、勝訴に向けて活動します。

また、法律相談では、裁判になった場合を念頭に置いて、「このような証拠があれば裁判で認められやすいですよ」「このような判例があるので裁判ではこのように判断されます」とアドバイスすることもあります。

もっとも、ここで注意が必要なことは、裁判をする目的は裁判に勝つこと自体ではない、ということです。裁判の目的は、依頼者が弁護士に依頼した当初の目的である、貸したお金を返してもらうこと、慰謝料を支払ってもらうこと、賃料を支払ってもらうことなどです。
仮に裁判に勝ったとしても、それを回収できないと意味がありません。 つまり、裁判をする目的は裁判に勝って勝訴判決をもらうことではなく、実際に相手方に対してお金を支払ってもらうことです。
裁判はそのための手段のひとつであって、目的ではありません。

事案によっては一方的に支払い請求する「裁判」よりも、示談交渉による和解や調停といった「話し合いによる任意の支払い」を促したほうが得策なこともあります。
相談者や依頼者が抱える問題に応じてそれを解決する最適な「手段」を選択することが重要だと考えます。

「裁判は目的達成の手段であって、裁判で勝つこと自体を目的にすべきでない。」

私が裁判で勝てるかどうかでを重視していた際に、先輩弁護士であるK先生に教えられた言葉です。

これからも依頼者の真の目的はなにか、問題解決に必要な手段はなにかを常に意識しながら、「依頼者の満足」を第一に考えて活動をしていきたいと思います。

2014年3月3日月曜日

交通事故と損害賠償請求について

今日は交通事故について書きたいと思います。

不幸にも交通事故にあわれた場合には、被害者の方々には様々な損害・不利益が生じます。少し長くなりますが、以下で各損害についてご説明致します。

交通事故にあわれた場合、被害者の方は重い傷害を負うことが多く、手術や入院が必要になったりと治療費が多額になるケースが多いです。

しかも、事故当時の外傷に加えて、事故後に後遺症が残ることもあり、被害者の方のその後の生活に対して大きな影響を与えることもあります。今までの仕事を続けることができなくなったり、仕事の内容を変更せざるをえなくなったりして、将来に渡って給料が減ることもあります。

さらに、治療や後遺症のために仕事を休まざるをえなくなり、その間の給料が得られなくなります。

また、被害者が不幸にもお亡くなりになった場合には、将来得ることができたはずの給料等を失うことになります。
本来であれば仕事をして給料をもらい、家族や両親を養うことができたのに、そのような機会を完全に失うことになります。
また、遺族の方々のその後の生活に大きな影響を与えることになります。

さらに、被害者の方は、傷害、後遺症、お亡くなりになったこと自体について、精神的損害も受けます。従いまして、相手方に対してその分の慰謝料を請求できます(お亡くなりになった方の慰謝料請求権は遺族の方々に相続されます)。

そして、当然のことながら、自動車が損壊した場合には、その修理費評価損代車費用がかかります。
自動車を使用して事業をしていた場合には、他に遊休車がない場合、修理期間中に使えないことによる損害(休車損)を受けます。

ここで注意が必要なのは、修理費用が自動車の市場価格(+買替諸費用)を上回る場合です。この場合は「経済的全損」となり、自動車の市場価格と売却代金の差額(買替差額)の範囲で損害賠償を請求できるにとどまります。

自動車の市場価格は、レッドブックの価格を踏まえつつ、中古車の専門雑誌やインターネット上の中古車販売情報等により、同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離・装備の車両の価格を参考にして判断されます。

以上のように、交通事故で被害にあわれた場合には、被害者の方々には精神的・肉体的に傷を負うだけでなく、経済的にも様々な損害を被ることになります。

もっとも、現在では自動車保険が一般的に普及しており、以上のような損害は保険により回復されるとも思われます。

しかし、加害者や保険会社が素直に治療費などを支払ってくれればよいのですが、「悪いのはそっちだ」「被害者にも過失があった」などと主張して治療費などを十分に支払ってくれないこともあります(過失割合の問題)。
また、治療費の額や後遺障害の等級を争って、治療費や慰謝料などを十分に支払ってくれないこともあります。
この場合には、医療機関や修理会社から治療費や修理費用を請求される上、加害者や保険会社が治療費や修理費用を払わないので、被害者の方は困難な状況に陥ってしまいます。

不運にも交通事故にあわれた上、その後にも交渉等で不利益を受けることは、断じて許せません。
私は、被害者の方々が交通事故により受けた精神的・経済的、そして経済的な損害を出来る限り回復できるように、損害項目ごとに適切な証拠を収集し、加害者や保険会社と粘り強く交渉致します。

交通事故にあった場合にどのような損害について賠償請求できるのか分からない、加害者や保険会社が損害賠償金を十分に支払ってくれないといったことでお困りの方は、弁護士にご相談されることをお勧めします。

以下では、交通事故で被る代表的な損害を参考までにまとめておきます。詳しい内容は、当事務所のホームページ上の「取扱業務→交通事故」をご覧になるか、弁護士までご相談下さい。


(参考)交通事故における代表的な損害

人的損害

① 治療費・入院雑費・通院交通費
  
② 休業損害  
    
③ 後遺障害による逸失利益  

④ 死亡による逸失利益  
       
⑤ 慰謝料  
       
⑥ 弁護士費用
      

物的損害

① 車両損害

② 格落ち損害(評価損)
      
③ 代車費用   
       
④ 休車損害
    



2014年2月24日月曜日

離婚におけるお金の問題について

今日は離婚におけるお金の問題について書こうと思います。

離婚を考える上で、離婚後に生活をしていけるかという点は重要であると思います。
離婚後の収入、生活費、子どもの養育費などを考えると、離婚したくても離婚できないという方もおられるのではないでしょうか。

お金の面で離婚の際に問題になるのは、主に以下の3つです。

① 財産分与(結婚してから離婚又は別居するまでの夫婦の共有財産を分割すること)
② 婚姻費用分担請求(別居してから別居解消又は離婚するまでの生活費を請求すること)
③ 養育費(離婚してから原則として子どもが成人するまでの子どもの生活費等)

①財産分与とは、夫婦が結婚してから築き上げた共有財産を原則として半分ずつに分割して分け合うことをいいます。

つまり、結婚後に貯めた預貯金、購入した不動産、投資している株式等の金融資産、生命保険等の保険金請求権などについて、夫名義・妻名義を問わず原則として夫婦の共有財産として半分ずつ分けます。
たとえ夫名義の不動産であっても、その原資が婚姻後の夫又は夫婦の給与からでていれば共有財産となり、財産分与の対象となります。
夫が働いて給与を得ることができるのも、妻の協力があるからこそなので、専業主婦の方々も当然財産分与を請求できます。

もっとも、「夫婦が共同して築き上げた財産」とはいえないもの、例えば、結婚前から保有していた預貯金や不動産、婚姻中に他から受けた贈与や相続により取得した財産などは、当人の「固有財産」となり、財産分与の対象にはなりません。

このように夫婦の共有財産を半分に分けるので単純そうに思うのですが、現実には一方又は双方が自分名義の預貯金等を隠して、財産分与の対象財産に加えず、こっそり独り占めしようとするケースもあります。
一概には言えませんが、夫の収入は妻が管理していて夫は預貯金について一切把握していないケース、また妻は夫から毎月生活費をもらうだけで妻は夫の収入はもちろんその使い途も把握していないケースでは、実際に離婚の話合いになってから、共有財産の総額や相手が財産を隠しているのではないかということで揉めるケースが多いです。

夫婦の収入はあくまで「夫婦の共有財産」なのですから、お互いその額や使い途、預貯金の額は把握しておくことをお勧めします。

また、離婚を決意された場合は、相手方が預貯金等を隠してしまうことを防止するため、離婚の話合いをする前に弁護士に相談して対抗策を練られることをお勧めします。

次に、②婚姻費用分担請求ですが、これは別居後から別居解消又は離婚までの生活費を相手方(主に妻から夫へ)に請求するものです。
これには妻の生活費だけでなく子どもの養育費も含まれます(妻と子どもが一緒に生活している場合)。

ここで注意が必要なのは、婚姻費用分担金は「婚姻費用分担請求の申立てのときから」認められるというものです。たとえ別居していても、実際に申立てをしていなければ認められません。
そして、あくまで「婚姻費用」の分担ですから、離婚してしまえば発生しません。

もっとも、同居していても全く生活費が支払われていないという場合には、別居していなくても、婚姻費用分担請求が認められたというケースがあります。生活の実態にもよるのですが、詳しくは弁護士にご相談ください。

そして、③養育費ですが、これは離婚してから子どもが成人するまで子どもの養育費用を負担することです。
これは、子どもの年齢にもよりますが、比較的長期になることも多く、また途中で支払がなされなくなるケースもありますので、離婚の際にしっかりと決めておかなくてはなりません。

養育費は子どもの生活や教育にとって非常に重要なものですから、養育費に関する条項は是非とも離婚協議書として書面化した上で公正証書にしておくことをお勧めします。
公正証書としておけば、仮に養育費の支払いが途絶えても、すぐに相手方の財産を差し押さえることができます。特に、一旦養育費の支払をしなくなると、将来の分も含めて相手方の給料の半分を差し押さえることができますので、非常に有効です。

②婚姻費用分担請求や③養育費の金額については、裁判所のホームページやウェブ上に「算定表」がありますので、簡単にご自身で算定できます。これは実際の裁判でも参考にされるものなので、一応の目安ではありますが、とても参考になります。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

前回も書きましたが、離婚せずに幸せな家庭を築くのが理想ではあるんですけどね。
しかし、実際に離婚を考えておられる方、これまでの生活から脱却して新しい人生を歩んでいきたい方、離婚とは切っても切り離せない「お金」の問題について興味がおありの方向けに書かせていただきました。

2014年2月8日土曜日

離婚する方法と離婚の理由について

今日は離婚について書きたいと思います。

近年、3組に1組は離婚はすると言われているように、離婚が増えています。

離婚をするには、主に以下の3つの手続があります。

 協議離婚(当事者同士の話合いで離婚する方法)
 調停・審判による離婚(当事者と調停委員の3者の話合いを中心とした方法)
 裁判による離婚(通常の裁判手続と同様に裁判官の判決による方法)

①協議離婚は当事者の話合いが中心になるので、②調停・審判離婚や③裁判離婚よりも比較的労力が少なく、費用も安く抑えられることが多いです。
もっとも、その後の養育費や財産分与での支払いを確実なものとするために、合意内容を「協議離婚書」として書面化した上で、公正証書としておくことをお勧めします。
また、交渉が難航しそうな場合には、第三者である弁護士を間に入れて話合いをするのも有効です。

また、当事者の話合いがまとまらない場合には、②調停・審判による離婚や③裁判による離婚という段階に発展します。
この段階になると、法律の解釈や判例の知識が必要となります。過去の同じような事案で裁判所はどのように判断したのかという見通しが立たないと、有効な主張ができないことが多いからです。


では、どのような理由があれば離婚することができるのでしょうか。

代表的な理由として挙げられるのが、①「不倫や浮気をした場合」です。

これは自由な意思に基づいて(強制されずに)夫または妻以外の人と性的関係を結ぶことです。
性的関係を結ぶとは姦通行為とされています。単にキスしただけ、抱き合っていただけというのは含まれません。

また、②「婚姻関係が破綻して回復の見込みがない場合」です。

この理由にあたるかどうかは様々な個別事情を総合して判断されます。

代表的な個別事情を挙げると、離婚意思、姦通行為に至らない性行為、長期間の別居、暴行虐待、犯罪行為、不労・浪費・借財等、性交不能・性交拒否、重大な疾病・身体障害などが挙げられます。

その他、上記のものよりは弱いものの、性格の不一致・結婚観・生活観の不一致の程度が大きく婚姻を継続できない場合には、他の個別事情を併せて(単独では認められにくい)、離婚が認められたケースもあります。

どれか一つがあれば離婚できるというわけではなく、これらの要素を総合考慮して「婚姻関係が破綻して回復の見込みがない」といえれば離婚が認められます。

そして、意外とよく問題になるのが、③「強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合」です。

この要件は相当厳しく、相当ひどくないと認められません。単に精神病を患ったというだけで離婚できるわけではありません。

また、たとえ回復の見込みがないとしても、それだけでは離婚理由にはなりません。
それに加えて、精神病を患った方の離婚後の生活が見通しが立つように、できる限りの援助や措置をとっていることが必要になります。

これは、精神病を患った方が悪いわけではないので、その後の生活に見通しが立たない状態で離婚されるのはあまりに酷だからです。

その他にも離婚の理由となるものはあります。また、離婚を考えていらっしゃる方々それぞれに個別の事情がございますので、各家庭の様々な事情に応じて離婚ができるか判断していくものだと考えます。

長々と書きましたが、離婚せずに幸せに過ごすことが一番なんですけどね。
ただ、再出発して人生をやり直したいとお考えの方々、離婚ってどういう場合にできるんだろうと興味関心がおありの方々向けに書かせていただきました。

2014年1月31日金曜日

成年後見と相続について

最近、高齢化社会の進展に伴い、「成年後見」という言葉を耳にすることが多くなりました。

「成年後見」とは、認知症等により判断能力が低下してきた方々の財産を保護するための制度です。

具体的には、認知症等により判断能力が低下してしまい、訪問販売等によって不当な契約を締結してしまった場合でも、成年後見人がついていればすぐに取り消すことができます。

また、自己の財産、特に居住用財産を他人にあげてしまったり、極めて安い価格で処分してしまったりした場合にも、成年後見人がついていればすぐに取り消すことができます。

このように、ご自身で自分の財産を守れなくなった場合に、「成年後見人」が代わりに財産を管理し、悪徳業者等による詐欺的な取引からご本人を守る制度が、「成年後見制度」です。

最近財産管理に不安がでてきた方々、そしてご自身のご両親や祖父母が認知症の疑いがあるものの、遠方に住んでいたり忙しくて同居したり財産管理をしてあげることができない場合などには、成年後見人をつけて財産を保護することをお勧めします。


他方、成年後見人が必要となる事例には、一部の親族が高齢者等の財産を私的に使い込んでしまっているケースもあります(もちろん、ご本人の介護費用、生活費用といった高齢者等の方々のために使用している場合は別です)。
これは、他の親族が見つけたり、介護士、ケースワーカーなどの方々が不審に思って相談して発覚することが多いです。

詐欺に引っかかったり、急に財産を処分したりすると発覚しやすいのですが、ご本人の親族が使い込んでるケースではあまり発覚しにくく、気がついたらご本人の老後の資産がなくなっていたということも稀ではありません。

そして、この場合には、一概には言えませんが、その後の遺産分割で揉めることが多いです。

なぜなら、一部の親族がご両親の預貯金等の財産を私的に使用して相続財産が減少している場合には、他の相続人が受けとる遺産が少なくなってしまうからです。

遺産分割では、相続人の一部が私的に使い込んだ場合には、使い込んだ分は「遺産の先取り」がなされたものとして、その分相続できる財産を減らすことができます。
しかし、それには使い込んだ分を特定しなければなりません。当然、当事者同士の話合いではまとまらず、調停・審判が無駄に長期化したり、遺産分割とは別に民事訴訟の提起という段階にまで発展するケースもあります。

このようなことを未然に防ぐ方法として、一部の親族による財産の使い込みが疑われる場合には、弁護士等の専門職による成年後見人をつけて財産を保護することは極めて有効です。

以上のように、財産管理に不安がある方々、そして認知症等の疑いがあるご両親又は親族がいらっしゃる方々は、一度、成年後見制度の利用(=「成年後見申立て」)を検討されてはいかがでしょうか。

2014年1月26日日曜日

弁護士の理想について

今日は法律のことではなく日常的な出来事について書きます。

先日、先輩弁護士であるK野先生にお寿司をご馳走になりました。
姫路にある富久寿司というお店なのですが、もう何を食べても美味い!

マグロ、アナゴ、ウニ、イクラと高級なものばかり出てくるはでてくるは。。。
その1つ1つが、他の店の寿司とはまるで味が違うのです。

寿司だけでなく、煮物や揚げ物もあるのですが、これまた絶品!

前回連れて行っていただいた時には、その2週間後くらいに北海道に行ったのですが、北海道の寿司や海鮮丼よりも富久寿司のほうが断然美味しかったので、北海道にがっかりしたことを覚えています。

姫路に行く機会があれば、いや機会がなくとも是非行かれてみてはいかがでしょうか。自信をもってお勧めします。ただし、値段も相当高いです。。。

その食事中に、K野先生から弁護士の仕事について色々教えていただきました。

その中でも、最も勉強になったのが、「目の前の依頼者に心から満足してもらうことが、弁護士として仕事をしていく上で最も大切なこと」という言葉です。

「弁護士にとって100ある事件の中の1つであっても、相談者や依頼者にとっては人生を揺るがす重大な1つの事件である。」
「自分の事件に対して十分に時間をかけ、最善を尽くし、万全の準備をして仕事に臨むことが、弁護士として仕事をする上で最低限のラインである、それができないなら依頼を断るか、他の弁護士に回すべきである。」
「依頼者に心から信頼してもらえれば、その依頼者が困ったことがあったり、友人・知人に困った人がいれば、また相談してくれる。それくらいまで信頼し満足してもらうことが大事である。」

私はK野先生に2日間ついたことがあるのですが、K野先生はこれらを実際に実践していました。
それだけに、言葉の重み、説得力が違いました。

自分の甘さを痛感するとともに、身近にこのような手本となる、尊敬できる先輩がいることは、本当にありがたいことだと実感しました。
自分も心機一転、心を入れ替えて仕事に取り組んでいこうと決意を新たにしました。

これは決してお寿司をご馳走になったから言っているのではありません(笑)

また、このような教訓は、弁護士だけでなく、他の職業にも共通することではないかと思います。

弁護士としての理想をみた貴重な一日でした。



2014年1月23日木曜日

犯罪被害者の救済について

犯罪が起きると被疑者・被告人は裁判の当事者として刑事手続きに参加しますし、ほぼ全ての事件で弁護人がつきます。

しかし、犯罪行為によって直接被害を受けた「犯罪被害者 」は、刑事手続きに参加することはあまりありませんし、弁護人がつくこともあまりありません。
本来であれば真っ先に救済されるべき被害者が、経済手続きでは置いてきぼりになっているのが現状です。

もっとも、近年では犯罪被害者の救済の制度がある程度整備されつつあります。

例えば、
① 刑事手続きに参加して意見を述べることができる「犯罪被害者参加  制度」
② 刑事手続きの延長で加害者に迅速に損害賠償請求できる制度
③ 犯罪被害者の被害回復のための公的な給付金制度
などがあります。

特に、①の被害者参加制度は、被害者が言いたいことをしっかりと裁判で主張することで、被害者の精神的な区切りになります。

また、犯罪被害による医療費や休業による減収など、経済的な負担を回復するためにも、②③の手続きは利用すべきと思います。通常の裁判のように時間や費用もかかりませんので、利用しやすいという利点もあります。

また、加害者との示談交渉を自身でやりたくない場合には、弁護士に示談交渉を依頼することも可能です。被害を受けてショックを受けている場合に相手方と示談交渉を強要されるのは、二次被害ともいえる大きな負担てす。

示談交渉自体は安価で引き受けてくれる弁護士もいますので、検討してみてはいかがでしょうか。

2014年1月13日月曜日

相続税の増税について

相続税が、平成27年1月1日から実質的に増税となります。

相続税とは、相続する財産の価額に応じて一定割合の納付が必要となる税金の一つです。
ただし、これまでは相続税をかされるひとはそれほど多くありませんでした。それは、相続税は、相続財産が5000万円+(1000万円×相続人の数)をこえない限り、課されないからでした。つまり、相続財産が少なくとも6000万円以上(相続人が一人以上)なければ相続税は課されないのですが、相続財産がそれほど多額になるケースは、それほど多くはないからでした。

しかし、平成27年1月1日からは、相続財産が3000万円+(600万円×相続人)をこえる場合に課されることのになります。つまり、3600万円以上であれば、相続税が課されることになります。これは、預貯金等やマイホームと土地をあわせて相続した場合には、簡単にこえてしまう額です。

もっとも、相続財産でも、すべてが時価で計算されるわけではありません。例えば、住居用の不動産は減額されて計算されます。

このように、従来と異なり、相続税は誰でも課される身近なものとなりました。また、相続財産の計算でも、放っておくと課税されてしまう額に達してしまうため、自分で税務署等に説明をしたりする必要しなければならないケースも増えてくると思います。

相続税の税率自体は変わらないのですが、これまで払う必要のなかった多くのひとが払わなければならなくなったという意味で、今回の相続税の実質的増税は、影響が大きなものといえます。